首都圏の通勤事情は年々悪化し、1961年1月には中央本線朝ラッシュ時に56分30秒という過去最高の遅延を記録したりと交通地獄と化していた。この状態を緩和するため同年秋から山手線に101系を4M3Tで投入したのである。101系の性能上山手線で使用するにはモーターに電流をあまり流せないため電気ブレーキをカットすると共に力工事の源流地も低く抑える必要性があり、従来の旧型国電よりも速度は遅くなったが、101系は両開き扉を採用しているのでラッシュ緩和に効果があることと山手線から捻出される旧型国電を他線区の増結用に回せる等の利点を買われたのである。このように103系の設計がまとまるまで中央本線用に設計された101系を山手線や総武線に投入せざるを得なかったのはラッシュ時の輸送改善のためでもあり、101系を入れても新性能電車投入のスピードアップ等の効果が薄いため、これらの通勤路線に適合した仕様でMT比1:1かつ低コストで大量生産が可能な新型通勤電車が必要になった。

101系では当初全電動で3.2km/h/sという高加速が目標とされていたが、6M4T化で2.0km/h/sの加速度と3.0km/h/sの減速度となった。新型通勤電車の投入候補路線のうち次期車両の投入予定の4線区(中央緩行線・総武線・京浜東北線・阪和線)で検討した結果高加速のメリットが大きくないことが明らかになってきた。輸送力向上のための運転時隔短縮が目的であり、高加速度は運転速度を向上して閉塞区間を早く通過することで次の列車を早く通すという考え方に基づいた要求だが、これを達成するには実際には高加速度の方が重要であることが分かったため、加速度を2.0km/h/s程度にとどめ、減速度3.5km/h/sを目指した。

次へ

戻る

TOP